Jesse 'Verbal' Eisenberg(後)

前編から読んでね







約束のジュース・バーに行くと、彼の自転車がチェーンで外に停めてあった。我々は中に入り、冷たいジュースをオーダーした。

アイゼンバーグは鼻歌を歌い、今彼が書いている途中で"8割方完成している"ミュージカルについて語りだした。
「僕のミュージシャンの友達がジョニー・カーソンのテーマをサンプルしていて、それがすごくいいんだ」
「友達の名前は?」
「ナス。名前を聞いたことある?」彼はしたり顔で答えた。


私の我慢も限界だった。レポーターから尋問者へとシフトするときだ。私は彼の話の内容、たとえば彼の小説に対する"関心"やテーマに関する知識の不足などについて、さらにつっこんだ質問を始めた。私の不信感を感じ取ったのか、彼はストローを噛みながら言葉を翻し始めた。「本にはならないよ。でも先生は褒めてくれたんだ」


そのとき、私にはジェシー・アイゼンバーグと「イカとクジラ」で彼が演じたウォルト・バークマンが重なって見えた。ピンク・フロイドの"Hey You"を自分が作った曲だと言って高校のタレントショーで披露し、それがばれたときのウォルトの弁明は「僕にも作れる曲だと感じた。誰かが先に書いた曲だというのは瑣末なことだと思った」だった。



私はアイゼンバーグに自分とウォルトと共通点があると思うかと尋ねた。彼は答える前に私の顔を探るように見た。「ウォルトは16歳のときの監督の姿であって、僕はあのキャラクターのように傲慢で不機嫌でひとりよがりではないよ。そう見えるの?」


私は微笑み、まともに聞いた。「あなた、私に嘘をついていた?」


私の率直さに不意をつかれたように、彼の態度ははイライラとした防御的なものから、完全に憂鬱な様子に変化した。彼は初めてそわそわするのをやめ、私をまっすぐに見た。とうとう壁をこわすことができたのかもしれない。




「僕はハルドール(統合失調症の薬)を飲んでいるんだ」





私が望んでいた答えではなかった。


ハルドールについて詳しく聞こうとすると、会話が録音されているのを忘れていたというような軽いパニックの表情が彼の顔に浮かんだ。彼は微笑んで目をそらした。
「だったかな?何を飲んでいるのかよく知らないんだ」



もうこの時点で何を信じていいのかわからなくなっていた。私の顔にそう書いてあったのだろう。




「嘘をついてたんだよ」彼は認めた。「たくさんインタビューを受けてると、精神のコントロールが難しくなるんだ。それで嘘をつき始める。よくわからないけど」



彼が認めた嘘は、彼のプロジェクトに関するものなのか、ハルドール、あるいは別の薬を服用していることなのか、それとももっと大きな蜘蛛の巣のようにからまった作り話を完成させるために嘘をついたと言っているだけなのかわからなかった。



空になったグラスをすするアイゼンバーグを見ながら、彼にとって有名人であることは居心地が悪いどころではなく、全く適応できないことなのだと悟った。嘘は彼にとってスポーツではなく、最後の防衛線なのだ。



「僕の彼女のことは書かないでほしいんだ。彼女が嫌がるんで。書いてほしい人なんてこの世にいないだろ?」彼はしばらく自分の問いかけについて考えた後、「有名になりたい人は別か」と自分で答えた。



ヘルメットをつけて自転車で走り去るアイゼンバーグを見ながら、彼のような現代の有名人にとって、これが正気を保つ最善の方法ではないかと感じ始めた。会ったこともない他人に自分の生活の細部を語って、無数の大衆に広めさせることが、嘘で固めたフィクションをでっちあげるよりもノーマルと言えるのだろうか?彼のあいまいな表現は自分の生活の一部をを守るためではないのか?それのどこがいけないのか?私の仕事は困難なものになったし、彼の話のどこまでが事実でどこまでがフィクションなのかはいまだにわからないが、全てがとてつもなく面白かったことは間違いない。


ジェシー、小説の成功を祈る。



元記事http://jessicapilot.com/recent-work/jesse-eisenberg-heeb-magazine-october-2009/