Jesse 'Verbal' Eisenberg(前)

Youtubeジェシーの動画も見つくした感があるので、動画以外にもいろいろ探していたらものすごく興味深い記事を発見しました。女性のフリーライターがHeebs Magazineという雑誌に書いたジェシーの記事です。内容はジェシー嘘八百にまんまと騙されそうになった彼女が、記事にする前に気付いて追及するというもの。「こんな嘘をついても何の得にもならないのになぜ?」というのは常々私が感じていることなので、面白かった。答えは出ないんだけど。


Heebs Magazineというのは初めて目にした名前ですが、「若くてヒップなユダヤ人をターゲットにした雑誌」らしいです。「ヒップなユダヤ人」という響きがなんかおかしい。いや、イメージだけの問題で実際はヒップなユダヤ人がたくさんいることは承知してますが。


さて、このライターさんとジェシーが会ったのはグリニッジ・ビレッジのピザ屋さん。ジェシーが創造的作文の授業を受けているNew Schoolから近いということでここが選ばれました。このときジェシーは24歳、ゾンビランド公開の直前です。最初は要約だけ書こうと思ってたんだけど、細かい描写が面白いので、ほとんど全訳してしまいました。長いので2回に分けます。

(注:映画『ユージュアル・サスペクツ』のネタばれがあります。知ってしまったら観る意味がないくらいのネタばれなので、これから観るつもりの人は読まないでください)


この場所、この時間で会うことを約束していたにもかかわらず、私が声をかけ、自己紹介すると彼は飛び上がった。「あぁ…僕ジェシーです」
レストランに入るときも、注文するときも彼は顔をあげなかった。

(略:ゾンビランドホーリー・ローラーズの話。ジェシーはこのときはゾンビランドに対してはあまり熱意をもって語らず、ホーリー・ローラーズの方により情熱をもっていた)

アイゼンバーグはそわそわと部屋の中をみわたし、ジーンズのデニム地を巨大な蚊に咬まれた痕であるかのようにひっかいていた。私は彼をリラックスさせようと話題を変え、以前書いたメールオーダー花嫁についての記事について触れた。
「まさか!今僕はまさにメールオーダー花嫁の小説を書いているんだ。もう8割方完成した。興味をもってくれてる人がいっぱいいるんだ」彼はピザのクラストにしゃぶりつきながら興奮した声をあげた。


私は感心した。30前で12本の映画に出演し、著作を出版する可能性も?私の反応に勇気づけられたのか、彼はこう続けた。「最初は芝居の脚本として書いたんだけど、登場人物のモチベーションが理解できないと言われて、小説に書き直したんだ。そうしたら良い反応がもらえた」彼の顔にチラと微笑みが浮かんだ。


ふたりばかり彼に気付いた人がいたので、外に出て歩くことにした。


外で私は煙草に火をつけ、ジェシーに一本すすめた。「ワオ!ご親切にどうも」彼は煙草に火をつけ、一息吸うと咳き込み、腕をふりまわした。
「煙草は吸うんでしょ?」
「吸わないけど、断ると失礼だと思って。気を使ってくれてありがとう」
私は彼に煙草をすすめたことを謝ったが、これは彼をかえっていらだたせた。
「煙草は吸ったことあるよ!未成年に麻薬をあげたわけじゃないんだから!」
彼は煙草の火を消し、私に差し出した。
「これ、いる?」 私は断った。


中年女性が近付き「私あなたの大ファンなの!」と叫んだ。彼は体をこわばらせ、地面を見ながら「ありがとう」とつぶやいた。女性が去っていくと、彼はため息をつきながら言った。「こういうことがあるから頭のいい人向けの映画しか出たくなくなるんだよ。頭がいい人は駆け寄ってきたりあまりしないから。大衆向けのバカな映画に出ると変な人がいっぱいよってくる。年配の女性にハグされたりするんだ」あと、近所に住むエイブラハムという少年。会うといつもナポレオンダイナマイトに出てたやつだ!と叫ぶので、彼の家の前を通るときは、できるだけ速く自転車をこぐんだ、と。


一週間後、数本の電話でのフォローを終え、インタビューを原稿に起こしていると、インタビュー時には気にもとめなかったある言葉が気になった。私は不安になり、何度もその言葉を繰り返し再生した。
「インタビューで嘘をつくことがある。話を面白くするためにね」


脳裏に『ユージュアル・サスペクツ』でヴァーバル・キントにあやつられていたことに気付いたチャズ・パルミンテリが、"コバヤシ"印のマグカップを落として粉々に割った瞬間の顔が浮かんだ。私はレポーターとして、人を読むのに長けていると自負していたが、騙されていたのか?


アイゼンバーグはメールオーダー花嫁についてあまり知識がなく、それが違法な行為だと間違って認識していた。大学の教授に話を聞きたいと言うと「インタビューのときに確認調査をするんだね、それって普通なの?」と話をそらそうとした。彼の話にひとつでも真実があったのか?エイブラハムは実在するのか?



なぜ彼は嘘をつく必要があるのか?ヴァーバル・キントのように悪事を隠しているわけでもない。嘘によって得をするわけでもない。面白半分にやっているだけなのか?



私は気を落ち着け、フォローアップのインタビューがしたいとEメールを送った。3日後、ブルックリンで会おうと返事がきた。  (後編に続く!)

ソースはここ。http://jessicapilot.com/recent-work/jesse-eisenberg-heeb-magazine-october-2009/